再びジョン万次郎

私のテーマ読書のひとつが幕末の頃に、西洋文化に触れた人々です。
その中で、やはり際立っているのは、福沢諭吉であり、ジョン万次郎です。

昨日は、井伏鱒二の「ジョン万次郎漂流記」を読みました。短編で、冷静な筆致のなかに、万次郎や一緒の漂流した仲間たちの喜怒哀楽、葛藤が見事に書かれています。山本一力の最新作とは、また別の味わいです。文体も、ジョン万が行きていた時代を再現するという狙いなのか、その頃のことばを使っているところも面白い点です。

ジョン万たちを救った捕鯨船の船長、ホイットフィールドが、漂流者のひとり五右衛門とハワイで再会した時の描写は、次のようなものです。

「ゴウエモン、ゴウエモン。そのほうは拙者を忘れたか?」。。。
「そのほう、拙者をまだおぼえているか?」。。。
「どうして見忘れることができましょう、大恩人ホイットフィールド氏その人、私どもは厚恩のほどを肝に銘じてよくおぼえております。」

もうひとつ素晴らしいのは、挿絵。宮田武彦絵とあります。風間完とか安野光雅にも通じるような、優しい画風。僕のように、歴史を追いたい人にも、絵に関心のある人にもおすすめの一冊です。

なぜか、ジョン万を読むと、英語の勉強意欲が湧いてくるから不思議です。

なお、この本、偕成社文庫に納められており、「小学上級から」とされています。